本研究は、インターネットを利用したメディアコミュニケーションが社会生活に与える影響を、社会関係資本(social capital)の概念を用いて多面的に検討することを目的とする。平成15年度は、(1)社会関係資本およびインターネット上のコミュニケーションに関する文献の精読、(2)対面の社会的ネットワークと携帯メールの社会的ネットワークとの構造的差異に関する縦断的検討を行った。文献の精読から、社会関係資本における社会的ネットワークの重要性と、インターネットのコミュニケーションの特徴が新たな社会的ネットワークを創出し、新たな社会関係資本を生み出す可能性が示唆された。また、メディアコミュニケーションの利用が対人関係を希薄にするのではなく、むしろ選択的な関係の形成を促す、という松田(2000)の選択的関係論に基づき、大学新入生のクラスを対象に社会的ネットワークの変化に関する縦断的な検討を行った。その結果、携帯メールの対人ネットワークは、対面のみのネットワークよりも友人数が少なく、親密度が高く評定されていた。また、社会的ネットワーク分析によるクラス全体のネットワーク構造についての検討では、対面の対人ネットワークでは三者間の関係を中心に発展していくのに対し、携帯メールの対人ネットワークでは二者間の関係が持続的であることが明らかとなった。これらの結果は、選択的関係論の妥当性を支持するものであり、メディアコミュニケーションの利用が対人関係を親密にし、社会関係資本の増大をもたらす可能性を示唆する。なお、本研究の成果は、学術論文および国際学会、国内学会で発表されている。
|