本研究は、インターネットを利用したメディアコミュニケーションが社会生活に与える影響を、社会関係資本(social capital)の概念を用いて多面的に検討することを目的とする。平成16年度は、対面の社会的ネットワークと携帯メールの社会的ネットワークの相互影響過程に関する縦断的検討を行った。大学新入生の社会的ネットワークを1年間にわたって測定し、社会的ネットワークの継続可能性をダイアド・レベルで推定するp_2モデルを用いて分析した結果、以下のことが明らかになった。まず、携帯メールの社会的ネットワークは対面の社会的ネットワークの継続可能性を高める役割を果たしており、その影響は少なくとも出会ってから1年間は継続することが明らかとなった。すなわち、携帯メールの社会的ネットワークは、適応を高めるのに有効な対面の社会的ネットワークでのコミュニケーションを活発にするという、社会関係資本の補完的役割を果たしていることが明らかとなった。ダイアド・レベルの分析で得られたこれらの知見は、個人のマイクロ・レベルにおいて報告された多くの知見と一致する。つまり、携帯メールのコミュニケーションの補完的役割は、相手との関係性の継続可能性という観点からも実証的に示されたといえよう。また、携帯メールで相談をするような関係の継続率は最も低かったことから、携帯メールでのやり取りの内容は、親密さを測る一つのバロメータとして重要な意味を持っているとも考えられるであろう。これらの結果は、国際学会および国内学会で報告されている。
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