シアル酸の一分子種KDNの哺乳動物細胞における生合成制御機および生物学的機能の解明をするため、以下の実験を行った。 1.シアル酸9リン酸合成酵素(NPS)に対する抗体の作成 天然に広く存在するNeu5Acの生合成に関与するシアル酸9リン酸合成酵素の活性調節機構および基質特異性を調べることで、KDN生合成制御機構の解明においても重要な情報が得られると考えられる。マウスよりNPSの遺伝子を得て、大腸菌で発現させ大量生成した。これを免疫源として、ウサギに対し免疫し、マウスシアル酸9リン酸合成酵素に対する抗血清を得た。 2.シアル酸9リン酸合成酵素の性質 培養細胞株の破砕液およびリコンビナントたんぱく質を用いたシアル酸9リン酸合成酵素の活性測定から、この酵素の活性がいくつかの単糖によって阻害がかかることが明らかになった。 3.細胞株、動物個体に対するKDNの投与 哺乳動物細胞株、マウス個体に対するKDNの投与を行い、その効果、取り込み機構を調べた。マウス個体、細胞株ともにKDNをよく取り込み、その取り込み効率はNeu5Acと同様であった。また、マウス個体においては、各シアル酸の経口投与後30分までに血中シアル酸濃度が最大となり、投与後2-3時間にかけて徐々に低下した。また、B16細胞を用いたシアル酸の取り込みにおいて、ピルビン酸と競合し阻害がかかったことから、その取り込みにモノカルボン酸輸送体が関与していることが示唆された。 4.UDP-GlcNAc2-epimerase/ManNAc kinase(GNE)の活性測定法の確立 ピリジルアミノ化を用いて、シアル酸生合成の最初の段階を制御するGNEの活性測定法を確立した。
|