研究概要 |
(1)グロボ系糖脂質の生理学的機能と疾患との関連についての解析。グロボ系糖脂質は様々な糖脂質の基質となるラクトシルセラミドにα1,4結合でガラクトースが結合したGb3を開始構造として伸長する糖脂質であり、特にGb3が病原性大腸菌O-157の産生毒素であるベロ毒素の受容体となることが知られている。グロボ系糖脂質本来の機能と疾患との関連について明らかにするため、Gb3の合成酵素遺伝子であるα1,4-galactosyltransferase (α1,4Gal-T)遺伝子のKOマウスを、相同性組換えに基づくジーンターゲテイング法により作成した。このKOマウスでは、組織のグロボ系糖脂質の発現が予想通り完全に消失しており、目指したグロボ系糖脂質欠損マウスを確立した。次に、In vivoにおけるベロ毒素受容体としてのGb3の役割について検討するため、KOマウスのベロ毒素に対する反応性について、静脈よりベロ毒素を投与した後の症状や組織の傷害について野生型と比較検討した。その結果、このKOマウスは野生型マウスの致死量の100倍のベロ毒素を投与しても異常症状もなく生存し、また病理学的な検討においても、組織の異常を全く認めなかったことから、in vivoにおけるベロ毒素の毒性が、Gb3の発現に完全に依存することが明らかになった。 (2)小脳神経細胞における複合型ガングリオシドの機能解析。複合型ガングリオシド欠損マウス(β1,4GalNAc-T KOマウス)では野生型マウスにくらべ、早期からの小脳のPurkinje細胞層の変性が起こる。そこで、このKOマウスを用いた小脳神経細胞の初代培養系を確立し、これを用いて原因解明を目指した。現在までに、生後1.5日目のマウスを用いた初代培養系を構築し、培養下での細胞の、生存、分化、またガングリオシド構成の変化を、KOとコントロールで比較検討した。
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