マルカタ南「魚の丘」遺跡出土の石膏に見られる針状結晶が、純粋な二水石膏のものより短い理由について考察した。結晶が短い理由は、不純物が結晶の成長を阻害したものと考えられ、「不純物としては、化学分析により混入していることが判明しているカルサイトと、プラスターとして用いた石膏の準備段階で、石膏原石を高温で焼いてしまった場合に生じる無水石膏が考えられる。「魚の丘」遺跡の石膏は、二水石膏だった部分も含め全体が無水石膏に経年変化しているため、当初から無水石膏が混ざっていたのかは化学分析では明らかにできない。そこで、半水石膏にそれぞれカルサイトと無水石膏を混ぜ水和したサンプルを作り、結晶の形状を観察した。その結果、無水石膏が混ざっている場合、針状結晶が短くなることが確認された。従って、「魚の丘」遺跡の石膏プラスターには、無水石膏が不純物として混入していたものと推測される。このことは、石膏原石を焼いた時に、400℃以上になっていたことを意味し、今後、石膏製造技法を考えていくうえで有益な情報である。 また、青色の合成顔料の作り方について考察した。古代エジプトでは、彩文土器にはコバルトで発色させた青を用いていることが分析から分かっている。コバルトで発色させた青は通常紺色になるが、彩文土器に見られる青は水色である。そこで、コバルトを用いて水色を作る方法を考える必要があった。現在日本画で使われている新岩絵具は色付きガラスを粉状にして顔料としているが、顔料の粒子の大きさを変えることで色を変えている。細かく磨りつぶすほど白っぽくなる。そこで、出土した古代エジプトのコバルトを用いた紺色ガラスの組成を参考に、紺色のガラスを作り、それを細かく磨りつぶして見たところ、水色の粉末を得ることができた。青色彩文土器は、一度ガラスにしたものを粉末にして得た水色顔料を用いて彩色したものと考えられる。
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