研究概要 |
怒り・敵意・攻撃性(AHA)と虚血性心疾患の関連を検討するために,以下の3点について研究を行った. (1)AHA概念の検討,およびAHA尺度の作成 欧米で特に重要性の指摘されている「シニシズム」を測定する質問紙の作成を試みた.大学生および社会人,計800名を対象に調査を行い,最終的に6項目1因子の簡便な尺度が完成した. (2)AHAと健康診断時測定の血圧の関連の検討 大学生を対象に,健康診断で測定された血圧値とAHA,とくに怒りの表現方法の関連について調査を行った.その結果,日常において怒りの抑制傾向の高いものは,そうでないものと比較して,収縮期血圧が10mmHg以上も高いことが示された. (3)AHAと日常場面における血圧の関連の検討 大学生32名を対象に,携帯型血圧計によって日常場面における血圧の動態を測定し,AHAとの関連を調査した.その結果,「短気」の得点の高い人,つまり怒りっぽい人は,人と会話をしているときに血圧値の高いことが示された. これらの結果から,怒りっぽく特にそれを抑制する人は,高い血圧値を示すことが予測される.このように血圧の高い状態は将来の虚血性心疾患の発症に大きく関与すると考えられる.今後はそのような傾向が,臨床群と統制群を比較した時にみられるか,検討が必要である. さらに「シニシズム」,つまり物事に対して常に皮肉的でネガティブに考える傾向が,このような怒りっぽく,さらにそれを抑制する傾向に関連してくると推測される.この点については今後の研究が必要である.
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