研究概要 |
本年度は,マウス脳磁図計測システムと感覚刺激装置の構築,マウス心磁図の計測実験を行った。 1.計測システムの構成においては,SQUID磁束計を磁気シールドボックス内に設置し,これらを更に電磁シールドルーム内へ配置することにより、微弱生体磁気計測のための環境を整えた。その結果,当測定環境下での本システムのノイズレベルは1.34pT/√Hz(@1kHz)となり,既存の小動物(ラット)用磁気計測システムよりも高い空間分解能をもつシステムでありながら,これらの装置と同等のノイズレベルを実現することができた。 2.感覚刺激装置の構成にあたっては,フェロモン物質(urine)を刺激とする嗅覚刺激装置を新たに製作した。ニオイ吸着性の低いテフロン素材を用いて,適度な温湿度を保持した無臭空気もしくはニオイ刺激がシールドボックス内のマウスの吸気として供給され,呼気は速やかにシールドルーム外へ排出されるような装置とした。 3.構築した本システムによってマウスが発生する生体磁気信号を計測可能か調べるために,マウスの心磁図計測をおこなった。心臓興奮の心筋活動に由来する生体磯気信号を計測する心磁図は、脳内のニューロン活動に由来する生体磁気信号の脳磁図に比べて活動強度が大きく,特別な外部刺激を要しない自律的活動であるため,計測システムの有効性の評価に適している。同時計測の心電図第2誘導電位をトリガとして,得られた心磁図信号を加算平均し,多点計測を行った結果,得られた心磁図信号はpeak to peakで150pT程度と十分な強度を持って心電図に同期して変化しており,磁気の湧き出し・吸い込みを示す空間的パターンも明瞭に確認可能であった。本システムを用いて,マウスの生体磁気信号計測が可能であることが示された。
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