原生動物ツリガネムシは、カルシウム励起収縮性繊維、スパズモネームを持つ。この主な構成タンパク質であるカルシウム結合タンパク質スパズミンの抗体を用い、キネトコア・コロナ・ファイバーとスパズモネームの相同性解析、及び相同タンパク質同定を試みた。実験対象として、ヒト培養細脚(HeLa細胞)を用いた。 ポリクローナル抗スパズミン抗体を用いて、1.免疫染色、2.ウェスタン・ブロットを行った。 1.免疫染色・・・まず、同調培養し有糸分裂時の細胞で共焦点顕微鏡を用いて解析した。このポリクローナル抗体は、動原体上のキネトコアのみを特異的に認識せず、いくつかの抗原タンパク質を認識していると予測された。そのため、細胞周期過程を通して蛍光染色することにより、細胞質に紡錘体微小管とは共局在しない微小管結合タンパク質、核内に染色質結合タンパク質、それぞれを認識していると予測された。 2.ウェスタン・ブロット・・・免疫蛍光染色法から予測された未知タンパク質の同定を行った。その結果、細胞核内に存在する染色質結合タンパク質は、分子量が55kDaであった。また、細胞質の微小管結合タンパク質は、約70kDaのカルシウム結合タンパク質で、細胞周期依存的に発現される分子種を持つこともわかった。 本研究によって、細胞周期、細胞分裂過程に関わる未知タンパク質類が、新たに発見された。スパズミンの分子量が20kDaであることを考えると、当初の予測と大きく異なる。キネトコア・コロナ・ファイバーとツリガネムシCa^<2+>励起収縮性ナノフィラメントの相同性は不明確であり、本研究で用いた数種のタンパク質を認識する抗体での解析は不適当であると考えられる。しかし、これらタンパク質の機能を阻害し、キネトコア・コロナ・ファイバー、分裂様式、細胞周期への影響を解析することにより明確になると考え、細胞内への抗体のマイクロインジェクションを現在試みている。
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