研究概要 |
本研究では中空糸膜外側表面に微生物を付着させ,中空糸膜の内側から特定基質を直接供給するメンブレンエアレーション法において処理に寄与する生物膜を多角的に解析し,処理予測が容易で高効率な生物膜の設計手法の提案,および複合汚染の単一槽内除去に対応可能なリアクタの開発を目的としている。 中空糸膜の表面改質による微生物付着促進効果の検討 本手法を効率的に達成するために中空糸膜に御生物が均一に付着することが重要である。そのために微生物と付着サイトの親和性を高くする必要がある。そこで,ポリエチレン製中空糸膜に放射線を照射し,エポキシ基を有するグリシジルメタクリレートを導入し,微生物と親和性の高い官能基を有するジエチルアミン(DEA)を反応させDEA膜を作成した。この膜を用いることで硝化細菌の中空糸膜への初期付着速度を約10倍高めることに成功した。また,付着促進の要因として中空糸表面の膜電位と表面のラフネスが微生物の付着速度に依存していることを明らかにした。 メンブレンエアレーション法の適用性評価 中空糸膜表面に付着した微生物群のみが中空糸内側から供給する酸素を利用できれば,生物膜の内側だけ特異的な環境を創製させることが可能となり,複合汚染に対応できる新規なリアクタの実現につながるものと考えられる。硝化反応をモデルとしてこのコンセプトが実現可能かどうか評価した。中空糸膜内側からの酸素供給量(OSR)は空気圧の変化により制御可能であり,硝化速度はOSRに比例することを明らかにした。また,付着生物膜の酸素利用効率はほぼ100%であり,バルク液への溶存酸素のリークが見受けられなかったことから,中空糸膜に付着した生物膜内でバルクと異なる環境が創製され,汚染物が除去されていることを明らかにした。この結果は,本手法を用いることで汚染物質を生物膜内において特異的に分解できるコンセプトの妥当性を示唆している。
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