研究概要 |
本研究はガス透過膜外側表面にバイオフィルムを形成させ,その内側から特定基質を直接供給するメンブレンエアレーション法を応用することで,新規水処理プロセスの創成を目的としている。 1.微生物の材料表面への付着促進因子の解明 本手法を効率的に達成するために,ガス透過膜表面への微生物付着を促進させることが重要である。そこで,放射線グラフト重合法を用いて物理化学性状の異なる様々な材料表面を準備した。各微生物による材料表面への微生物付着試験より,付着に影響を及ぼす最も大きな因子は材料表面の電位であることが明らかになった。さらに,微生物の材料表面への付着速度は材料表面の物理的性状に対して定量的に評価できることが示された。 2.微生物固定化のためのストラテジーと水処理プロセスへの応用 上述した結果より微生物との付着が促進される物理的性状を有する繊維材料をガス透過膜に被覆し,ガス透過膜-繊維複合体作製した。この複合体を用いることによりバイオフィルム形成が困難であった硝化細菌および独立栄養性脱窒細菌の迅速・簡便な固定化が可能となり,以下の2つのプロセスに応用した。 2.1.単一槽内有機物・窒素・リン同時除去システムの開発 ガス透過膜-繊維複合体に硝化細菌を固定し,膜内側より酸素を供給することで,複合体部位のみに好気的部位を創製した。この局所環境の創製により,既存のプロセスでは困難であった単一槽内による有機物・窒素・リンの同時除去を可能にするコンセプトの確立に成功した。また,長期運転試験により安定して有機物・窒素・リンを除去できることを実証した。 2.2.水素供与型メンブレンバイオフィルムリアクタの開発 水素ガスをガス透過膜から供給し,独立栄養性脱窒細菌を固定化した複合体を用いることで,既存の水素供与型バイオフィルムリアクタを超える硝酸性窒素除去速度を達成し,長期間にわたる安定した除去が可能となった。
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