研究概要 |
ヘパラン硫酸(HS)は、細胞増殖因子、細胞接着因子など、多様な分子と相互作用し様々な生物学的活性を示す。HSのこの多彩な機能は、「異なる硫酸化パターンを持つHSが、それぞれ異なるタンパク質と結合する」ことにより特異的に調節されると考えられている。しかし、このような特異的硫酸化が、生体内において細胞外からのシグナルの特異性を決定しているのかどうか未だに不明である。HSの異なる部位の硫酸化は、それぞれ異なるHS硫酸転移酵素により触媒される反応である。そこで私は、in vivoにおけるHSの特異的硫酸化の意義を明らかにするために、遺伝学的手法が有効なショウジョウバエを用い、2-O及び6-O硫酸転移酵素(dHS2ST,dHS6ST)の機能解析を試みた。 dHS2ST及びdHS6STの機能を調べるため、P-element挿入系統を用いたExcision法により、両遺伝子の突然変異体を単離した。HPLCを用いてヘパラン硫酸の二糖解析を行った結果、それぞれの突然変異体において2-Oもしくは6-O硫酸化ヘパラン硫酸が著しく減少することが分かった。驚いたことにdHS2ST及びdHS6ST変異のホモ接合個体はともにviableであり、明らかな外部形態異常を示さない。しかしながら、両変異体はともに不妊になることから、次に卵形成に注目し解析を進めた。その結果、dHS2ST変異体では卵が形成されず、dHS6ST変異体では卵の形態に異常をきたすことが分かった。またdHS2ST;dHS6ST二重突然変異体は強い致死性を示すことから、両遺伝子は機能的に密接な関係にあることが示唆された。現在、dHS2ST及びdHS6ST遺伝子が卵形成においてどの様なシグナル系に関わるのか、また二重突然変異体が示す表現型の詳細な解析をおこなっている。
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