近年、経年航空機に対して更なる使用寿命の延長が要求されるようになった。そのため、機体内に多数存在する疲労き裂の効果的な補修技術として、複合材パッチによる疲労き裂の接着補修が考案された。特に、オーストラリアを始めとする海外では既に実機への適用が進められ、多くの研究が行われている。その結果、パッチ自身の剥がれによる補強効果の低下などが問題点として挙げられ、補修部の安全性を確保するという観点から、接着補修構造のヘルスモニタリングの重要性が指摘された。しかしながら、経年航空機という既存の構造へセンサ機能を付け加えることは困難であり、このような観点に立って行われた研究は極めて少ない。そこで本研究では、パッチ自身へセンサ機能を付与したスマートパッチの開発を試みた。 平成15年度はスマート化した複合材パッチが通常パッチ同様の補修効果を発揮し、センサ機能を付与したスマートパッチの作製が目的である。最初に通常パッチを作製し、疲労負荷下におけるパッチの補修効果とその下を進展するき裂を調べた。このような基礎的な検討によりパッチ自身の剥がれやき裂の進展を明らかにし、損傷検出に最適なスマートパッチの作製手法を確立することが可能となる。実験による詳細な観察の結果、複合材パッチ補修部で発生する損傷は被補修材に進展するき裂とパッチ自身の剥がれであることが分かった。また、剥がれの発生位置は接着剤と被補修材の間であり、き裂の進展に優先して剥がれが起こること確認できた。次に損傷の進展過程を考慮し、最適なセンサの埋め込み位置を決定した。さらに、平成16年度の目的である「光ファイバセンサによる剥がれ・き裂の検出」に関する予備試験を行い、センサ信号によって二種類の損傷の進展が区別できることを実験および解析で明らかにした。次年度にさらに高精度の検出を目的として検討を進める予定である。
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