平成15年度に予定していた研究内容は、第一にエジプトの政権政党である国民民主党の組織体系の全容と、その権力の分配構造の解明、第二は党のエリート分析であった。研究の成果としては、計画通りの成果を上げることができた。 前者の研究成果は、「エジプトにおける政権政党・国民民主党の組織体系」という題目にまとめ、『現代の中東』(アジア経済研究所)2003年7月第35号において発表した。そこでは、党の綱領に基づいて、国民民主党の中央組織から地方の末端組織までの組織体系とその指揮系統を解明し、組織図の形で示した。そのうえで、党の各組織の構成員とその機能を分析した。その結果、度重なる党改革にもかかわらず、依然として党中央組織が強大な権限を保持していること、また、2002年に新設された現ムバーラク大統領の次男ガマールが率いる政策局の影響力が一層強まっていることが明らかとなった。第二の研究課題である党のエリート分析については、70枚程度の論文にまとめた。この論文は、平成16年度内に刊行予定であるアジア経済研究所・研究双書において発表する予定である。この研究では、約8000名の国会議員の経歴をデータベース化して分析した。その結果、20世紀初頭に議会が設立されて以来、一貫して一族から国会議員を輩出し、現政権の基盤を下支えする存在となっている全国の名望家の家族名と、その歴代政権との関わりが明らかとなった。
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