1、日本産4種のマルカメムシ類(マルカメムシ、タイワンマルカメムシ、ツヤマルカメムシ、タデマルカメムシ)では母親が共生細菌を含む「カプセル」を産み、子がこれを摂取することによって共生細菌が垂直伝播される。 2、これらの種において、孵化前の卵塊からカプセルを除去すると孵化幼虫は共生細菌を獲得できず、成長の遅延、高い死亡率、異常な体色が見られる(カメムシにとって共生細菌は必須)。 3、マルカメムシMegacopta punctatissimaにおいて、母カメムシの産むカプセルは共生細菌の塊ではなく、厚い層状の外皮に共生細菌と大量の樹脂状物質が包まれたものである。外皮と樹脂状はメスの中腸で分泌されるものであり、このことは共生細菌の垂直伝播にはメスカメムシにとって物質的なコストがかかることを示している。 4、マルカメムシMegacopta punctatissimaにおいて、一つのカプセルには平均約6匹分の共生細菌が含まれるが、野外での母カメムシはカプセル一つにつき3〜5個の卵しか産んでいない。すなわち母カメムシは子が必要とする数よりも多めにカプセルを産んでいることになり、これは子に共生細菌をより確実に伝えるための適応であると考えられる。 5、孵化幼虫の共生細菌摂取行動(カプセルを吸う行動)とその後に見せる集団形成&静止行動との間には密接な関係がある。すなわち、共生細菌を十分量摂取した幼虫は必ず複数個体で集団を形成し約2日間の静止状態に入るが、共生細菌を獲得できない個体はカプセルを探索し続けるため静止状態に入らない。このことから、共生細菌の摂取が幼虫の行動の転換を引き起こしてる可能性が示唆される。
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