本年度の研究実績として、まず機能主義的組織論の源流である、ハーバード大学アーカイブスにて渡米調査を行ったことがあげられる。主として、タルコット・パーソンズの未公刊論文や書簡などの調査を行った結果、同時代人のチェスター・バーナードや、後人のアミタイ・エツィオーニやミシェル・クロジェらとの学説史的な関係性について明らかにすることができた。そのなかで、機能主義とラベリングされる組織論のなかから、良い意味で「漏れ出す」点があることを確認することができたほか、未公刊資料のデータベースを作成することができた。 また、国内では、東北公益文科大学における日本社会学史学会に参加し、機能主義と対抗関係にある構築主義についてのシンポジウムから大きな知見を得た。本学会で議論された構築主義的な研究は未だ明確なコンセンサスに欠ける状態にあるが、新たな組織論、とりわけ機能主義と解釈主義の双方を乗り超える組織論を展開するためには、必須の足がかりと成り得るものであり、より一層の議論の精緻化が必要であることを確認することができた。 本年度は、機能主義の再評価ならびに解釈主義の最前線にある研究に接することで、研究課題名「組織の理論社会学-機能主義と解釈主義を超えて」における研究の理論的基盤を確定する作業に従うことが可能になった。 さらには、その理論的基盤の経験的妥当性をはかるために、国内調査として茨城県東海村におもむき、組織としての原子力発電所がおこなう広報活動の実態を「原子力科学館」や「東海テラパーク」においてインタビュー調査を行い、組織イメージという、機能主義でも解釈主義でも取り扱いにくいテーマについて考察することができた。
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