研究課題
カルモジュリン(CaM)は真核生物に普遍的なCa^<2+>結合タンパク質であり、Ca^<2+>依存的に標的タンパク質を活性化し幅広い細胞応答を調節する。タバコには3タイプに大別される13のCaM遺伝子(NtCaM1-13)が存在し、異なった発現パターンおよび標的タンパク質に対する親和性を示す。CaMを介した病傷害情報伝達機構を明らかにするため、CaM結合タンパク質をスクリーニングしMitogen-activated protein kinase(MAPK)脱リン酸化酵素(NtMkP1)を新規なCaM結合タンパク質として同定した。MAPKはMAPKカスケードと呼ばれる情報伝達経路を構成し、細胞外の刺激を細胞内の応答へと伝達する真核生物に普遍的かつ重要な情報伝達因子である。各タイプの代表としてNtCaM1、NtCaM3およびNtCaM13を用い、大腸菌を用いて作製したNtMKP1の組換えタンパク質に対する結合実験を行ったところ、NtMKP1はNtCaM1とNtCaM3に強く、NtCaM13に弱く結合した。種々の欠失クローンおよびアミノ酸置換クローンを用いた解析より、CaMとの結合にはNtMKP1の436から453番目のアミノ酸配列からなるbasic amphiphilic α-helix(Baa)モチーフが必須であることが明らかとなった。傷害を受けたタバコにおいてはWIPKとSIPKという二つのMAPKが10分以内に活性化される。NtMKP1を過剰発現する形質転換タバコを作製し、NtMKP1の過剰発現がMAPKの活性におよぼす影響を調べた。その結果、NtMKP1の過剰発現体においてSIPKおよびWIPKの活性化の阻害が認められ、NtMKP1が実際にMAPK脱リン酸化酵素として機能することが明らかになった。
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