研究概要 |
アブラナ科野菜根こぶ病では、根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)の感染によるオーキシンとサイトカイニン含量の上昇が、発病の一因であると考えられている。そこで、本研究ではハクサイ(無双)を用い、植物のサイトカイニン合成遺伝子(イソペンテニルトランスフェラーゼ遺伝子;IPT)及びオーキシン合成に関与すると考えられる遺伝子(ニトリラーゼ遺伝子,NIT;アルデヒドオキシダーゼ遺伝子,AO)が、根こぶ病発病時にどのような発現変動をするかを調べた。 始めにハクサイから各遺伝子のクローニングを試みた結果、5種類のIPT遺伝子(BrIPT1,3,5,7,8)と3種類のNIT遺伝子(BrNIT1,2,3)、2種類のAO遺伝子(BrAO1,2)を単離した。さらに発現解析の結果、IPT遺伝子については、BrIPT3,5,7は根ごぶでは発現が抑制されるが、逆にこぶ以外の部分ではBrIPT1,3,5,7の発現が促進されていた。また、BrIPT8の発現は検出できなかった。一方NIT遺伝子については、BrNIT1,3の発現は根こぶ病によって特に影響を受けなかったが、BrNIT2をProbeとした場合、1.4kbと1.1kbの転写産物の増加が観られ、1.1kbの転写産物は接種区のみで検出された。転写開始点の解析から1.1kbの転写産物はBrNIT2遺伝子の途中からの転写開始によって産生されていることが明らかとなった。AO遺伝子については、根こぶ病菌接種によってBrAO2の発現は減少したが、BrAO1は接種によって発現が促進された。また活性染色法により、根こぶ形成時のAOの活性上昇が認められた。以上の結果から、根こぶ病発病時の植物ホルモンレベルの変動には、これらの遺伝子の発現変動も関与している可能性が考えられた。
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