研究概要 |
アブラナ科野菜根こぶ病によるハクサイ根こぶ形成時には、BrNIT2遺伝子の第二イントロン付近からの転写開始により1.1kbの転写産物が蓄積する。このことから、BrNIT2の第二イントロン付近の配列のプロモーター利用を検討するために、これをGUS遺伝子に連結し、Arabidopsisに導入してプロモーター活性を調べた。その結果、第二イントロンと第三エクソンの一部を含む620bpの塩基配列(P-NIT2int)が根こぶ形成時に強いプロモーター活性を持つことが明らかとなった。このプロモーター活性は根こぶ以外にも開花時に葯の基部で検出されたが、他の部分では検出されず、根こぶ形成を抑制するためのプロモーターとして利用価値が非常に高いと考えられた。 さらに、根こぶ病抵抗性の付与を目的としてP-NIT2int及びCaMV35Sプロモーターを利用し、根こぶ形成時に発現が促進される宿主植物のオーキシン生合成関連遺伝子BrNIT2、BrAO1)の発現を抑制するためのantisenseベクターを構築した。サイトカイニン合成酵素遺伝子(IPT)については、根こぶ形成時に発現が抑制されることから、これを利用した抵抗性育種素材の作出は困難と判断し、根こぶ形成時に増加するサイトカイニンに対しては分解系を活性化すること及び、サイトカイニン応答のネガティブレギュレーターであるARR22遺伝子を発現させることにより対応することとした。そこで、Arabidopsisからサイトカイニン分解酵素(AtCKX1,2)及びARR22をクローニングし、同様にベクターコンストラクションした。 現在、Brassica oleracea(ブロッコリー)及びBrassica rapa(ハクサイ)への形質転換作業を行っている。また先行してArabidopsisへ遺伝子導入し、根こぶ病抵抗性試験を行っている。
|