研究概要 |
本研究では、正方晶系化合物で初めて反強四重極子(AFQ)秩序を示す物質として注目されたDyB_2C_2とHoB_2C_2を取り上げ、弾性定数の測定を系統的に行い、四重極子秩序を研究する。 DyB_2C_2の横波弾性定数C_<44>,C_<66>,(C_<11>-C_<12>)/2にソフト化を観測した。四重極子感受率による解析を行い、DyB_2C_2の結晶場パラメータを決定した。基底状態はE_<1/2>対称性とE_<3/2>対称性のクラマース二重項が1.7Kで擬縮退する擬四重項であると結論づけた。HoB_2C_2の超音波実験から横波弾性定数C_<44>,C_<66>,(C_<11>-C_<12>)/2にソフト化を観測した。またIV相内における超音波吸収実験により求められた緩和時間τ=7×10^<-9>secは、IV相内で四重極子O_<yz>,O_<zx>の揺らぎが生じていることを示している。 さらに、物質・材料研究機構のハイブリッドマグネット(GAMA)を用いてH=30Tまでの強磁場領域の磁気相図を研究した。HoB_2C_2の超音波実験から新たにH//[001]方向でH>4Tの領域にAFQ相(II相)を発見した。またII相の臨界磁場はDyB_2C_2とHoB_2C_2でそれぞれH_<c[001]>=15.8T, H_<c[001]>=26.3Tであることがわかった。両物質のH//[001]方向の高磁場領域に存在するII相は[001]方向の磁場に対するAFQ秩序の安定性を示している。 HoB_2C_2のIV相に関して三端子キャパシタンス法による熱膨張実験を行った。その結果IV相内において自発歪みε_<yz>(=ε_<zx>)≠0が生じていることが解った。DyB_2C_2で決定した結晶場パラメータをHoB_2C_2に適用すると結晶場基底状態は擬五重縮退をもち、全ての八重極子が自由度を持つ。その中で八重極子T^α_x+T^α_y+T^α_zは、自発歪みε_<yz>,ε_<zx>に関係する四重極子O_<yz>,O_<zx>と、c面内に成分を持つ長周期磁気構造に関係した磁気双極子J_x,J_yを同時に誘起する。そのためIV相の秩序変数は八重極子T^α_x+T^α_y+T^α_zである可能性が考えられる。
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