本研究課題の一部分となる前年(平成14年度)までの調査研究をまとめ論文を作成し、発表すると同時に、国内外における学会・研究会に参加することにより理論を深める。また、海外・国内調査において収集した論文・文献の徹底した読み込みを進めた。 [調査・研究活動] 1)学会・研究会への参加:東南アジア史学会、環境社会学会、遺産観光と文化遺産管理に関する研究会(国立民族学博物館)、クメール学研究会、文化財保存に関する研究会(東京文化財研究所) 2)国内調査:国立民族学博物館図書室における資料収集(6月・1月実施)。民博所蔵の英国議会資料(BPP)を用いて英国における文化遺産保存概念の始まりと国家的な保護制度発展の歴史を考察する。また、19世紀末からの英国による東南アジア地域への政策文書から、当時のシャム(タイ)における国内情勢と遺跡保存の関係を探る。一方で、同所蔵の"Journal of Tourism Research"などにおける文化遺産観光に関する研究論文を収集し、観光学の視点から文化遺産活用の方法としてのヘリテージ・ツーリズムを検討することにより、東南アジア諸国における遺跡保存に伴う地域開発の問題を考察した。 3)海外調査:フランス調査(2004年9月8日〜10月20日)を実施し、ユネスコ(国連教育科学文化機構)パリ本部にあるユネスコ公文書部局において世界遺産成立に関する資料を収集。1972年に成立した世界遺産条約がどのような経緯で締約されその成立過程で東南アジア諸国を代表する途上国がどのような反応をみせていったかを、条約成立前の政府間の公文書により分析。 4)ギリシャ・ロドス島で開催された第7回世界遺産都市会議(9月23日〜26日)に出席し、世界からの遺跡保存・都市保存関係研究者、政策決定者らと交流することにより、世界全体の文化遺産保存管理の傾向を学び、そのなかでの東南アジア地域における特徴を認識できた。 5)日本財団APIフェローシップ国際ワークショップ(2003年12月8日〜12日)における研究発表。(発表内容「文化遺産保存政策と地域アイデンティティ形成過程-東北タイにおけるクメール遺跡を事例として」)
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