昨年度に引き続き、英国との共同研究を行った。 まずは、殺菌剤のトリクロサンが、紫外線照射下で脱塩素化して二塩化ダイオキシンになることに着目し、純水と淡水と海水を用いて、人工光照射下での光分解実験を行った。その結果、純水中のトリクロサンはほとんど分解せず、淡水に比べて海水中のトリクロサンの方がほぼ倍の速さで分解した。これは、環境水中に含まれる有機物や塩類が、トリクロサンの光分解を促進していることを示唆する。特に塩類の効果に関しては、本研究で初めて示された。一方で、ダイオキシンは海水中で残存しやすいことが示唆された。 次に、揮発性および残留性有機化合物における、炭素と塩素の安定同位体比(13Cと37Cl)および炭素の放射性同位体比(14C)に関する文献を集め、個別化合物おける各種同位体比の測定法、起源推定における適用例をレビューした。その結果、新しい炭素が含まれる生物起源炭素と古い炭素が含まれる人為起源(化石燃料起源)炭素を識別できる14Cが、最良の起源推定ツールとして示された。一方で、13Cと37Clに関しては、環境動態(同位体分別効果)を調べるツールとしての可能性が示された。そこで、英国沿岸で採取した汚染底質の抽出試料を分画し、Natural Environment Research Councilに13C測定を依頼し、14C測定のためにプリマス大学で分取型GCを用いて分取濃縮した。 また、国際学会では「バイオアッセイを用いた廃油中PCBの簡易分析法の開発」と「トリクロサンの光分解」を発表した。閉会式では、注目すべき研究として、後者の研究が紹介された。
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