研究概要 |
アップ、ダウンクォークの動的な効果に加えてストレンジクォークの効果も取り込んだ3フレーバーQCDによるB, K中間子の物理量の計算を目指して、ゲージ配位の生成および軽いハドロン質量の計算を行った。今後、このゲージ配位を使ってセミレプトニック崩壊形状因子などの物理量を測るための基礎的な研究を行う予定である。 また、陽子崩壊に寄与するハドロン行列要素の計算を行った。陽子崩壊は大統一理論の最も重要な帰結のひとつであり、B, K中間子の物理と同様に、標準模型を越える物理を探る上で大きな手がかりとなる過程である。陽子の寿命が実験的に観測できる範囲にあるかどうかを知ることは、大統一理論の模型を考える際に不可欠であり、そのためにはハドロン行列要素の信頼できる値が必要である。 格子QCDは、このハドロン行列要素をQCDの第一原理から計算するほぼ唯一の方法であるが、これまでは有限の格子間隔での結果しかなく、連続極限に関する系統誤差を評価することができなかった。そこで今回は、いくつかの格子間隔でシミュレーションを実行することにより連続極限での値を求めた。これによって残された系統誤差はクエンチ近似による誤差だけとなった。この系統誤差を取り除くにはクォークの動的な効果を取りいれたシミュレーションが必要であり、これは次の課題である。 この研究成果は、国際会議「LATTICE2003」(つくば、2003年7月)、基研研究会「素粒子物理学の進展」(京都、2003年7月)、日本物理学会2003年秋季大会(宮崎、2003年9月)で発表された。論文は現在投稿中である。
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