1.はじめに 本年度においては、本研究で使用する地球観測衛星データの特性を詳しく調べる基礎的研究、および実際に起こった巨大災害を地球観測衛星データを用いて解析する応用的研究を行った。 2.基礎的研究 災害の予知を行う場合、その精度が重要となってくる。そこで、LANDSAT/TMデータ(解像度30m)の判読可能領域を、大きさが既知である溜池を対象として調べた。 この結果、最小判読可能領域は約50m×30m以上であることが分かり、地上の状況判別には、最低でも2画素以上の連続した近似値反射率エリアが存在する必要があることが分かった。 3.応用的研究 (1)太宰府市土石流災害 2003年7月19日に発生した九州豪雨災害の一つ、福岡県太宰府市の土石流災害を巨大災害の一つと考え、研究対象とした。解析に用いたデータはTERRA/ASTERデータ(解像度15m)である。 現在までに踏査による現地調査を行い、植物活性の変化を災害直前、およびその1年前の2つの地球観測衛星データから算出し、それを画像化した。今後は、植物活性の低下地域と土石流発生箇所、および山体の風化状況との関連性を調べ、土石流発生予知の可能性を調べていく予定である。 (2)十勝沖地震 2003年9月26日、北海道十勝沖で震度6、マグニチュード8.0の地震が起こった。この地震の前後で地表面温度、植物活性の異常変化を調べる。 現在までに、NOAA/AVHRRデータ(解像度1.1km)を使用し、地震発生前から発生後までの8時期における地表面温度を算出し、それを画像化するともに、地表面温度差画像も作成した。この結果、地震発生2日前には、被害が大きかった地域において温度上昇が見られることが分かった。今後は温度上昇箇所と活断層位置との関連や、植物活性の変化についても調べていくつもりである。また、他の地球観測衛星データについても同様に解析を行っていく。
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