本年度は、巨大災害の衛星データによるモニタリング解析として、2005年3月20日発生の福岡県西方沖地震を対象に詳細な現地調査、及び衛星データによるモニタリング解析を行った。 解析に用いた衛星データは、解像度が1.1kmと低いが、ほぼ毎日の観測データを取得することが可能なNOAAのAVHRRデータである。この他にも、中解像度衛星データや高解像度衛星データなども検索をしたが、地震前後で適当なデータはなかった。 NOAA/AVHRRデータには、ch1〜ch5の5つのバンドのデータがあり、その中でも遠赤外、温度(10.5〜11.5μm)における反射を捉えているch4のデータを、震源地、およびその周辺域において余震分布域からも外れているA、B地点で取得し、地震前後の変化を調べた。この結果、本震前後の期間において、どの地点においてもCCT値に大きな変化は見られなかった。 また、震源がある玄界灘にはジェットフォイルが航行しており、博多と釜山を結ぶ国際航路のビートル(日本船籍、JR九州)、およびコピー(韓国船籍)、博多と壱岐を結ぶ国内航路のヴィーナス(九州郵船)である。これらジェットフォイルは航行中に海水温を測定しており、地震発生当日とその前後における海水温観測から、地震に関係して海水温に異常がなかったかを調べてみたが、どの観測結果にも顕著な温度変化は生じていなかった。 今回の福岡県西方沖地震を対象とした、衛星データによるモニタリング解析においては、顕著な異常は見出せなかった。今回のように震源が海底にある場合、海流や海水の影響によって、海水面温度には変化が生じない可能性があると考えられる。勿論、熱異常が発生していないことも考えられるが、仮に熱異常が発生している場合においては、低解像度の衛星データでは捉えきれないことも考慮し、海域におけるモニタリングには高解像度衛星データを用いた解析が望まれる。
|