1.上CM次元と上CI次元という、可換ネーター局所環上の有限生成加群の新しい不変量を導入した。これらはそれぞれ環のCohen-Macaulay性、完全交差性を特徴づけるものである。そして、相対上CM次元、相対上CI次元という新しい不変量を定義し、それらがそれぞれ上CM次元とG次元、上CI次元と射影次元を媒介することを証明した。 2.CM次元はGerkoによって可換ネーター局所環上の有限生成加群の不変量として定義されたものであるが、これを可換とも局所環とも限らない環上の有界鎖複体の不変量にまで拡張した。そして、その拡張したCM次元を用いてCohen-Macaulay環、Gorenstein環の特徴づけを行った。 3.与えられた素数標数の可換ネーター局所環にFrobenius写像を通して代数構造を入れたものを考え、それのCM次元、G次元によって(素数標数の)Cohen-Macaulay環、Gorenstein環の特徴づけを行った。また、Herzogの定理を、より一般化されたかたちで、かつ彼自身の証明よりもはるかに初等的な証明で与えた。 4.型が1の可換ネーター局所環のGorenstein性のG次元による判定法をいくつか構築した。そのうちの一つは、20世紀後半の可換代数学における主結果の一つであるPeskine-Szpiroの交差定理にまつわる予想の特別な場合を肯定的に解決するものである。 5.G次元0の加群の圏に関し、Gorenstein局所環上では成り立つ一つの事実が一般の可換ネーター局所環上で成り立つのかどうかを検証し、否定的な結論を与えた。それは、G次元0の加群はGorenstein環上の極大Cohen-Macaulay加群と同様の振舞をするのではないかという予想を覆すものである。
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