本研究は、国の文化財保護政策下における地方行政の役割および民俗芸能の継承の実態を明らかにし、民俗芸能の保護に新たな提言を加えることを目的としている。従って三年間の継続的な現地調査は必須であるが、今年度は特に「早池峰神楽」、「松山能」、「椎葉神楽」、「大江幸若舞」、「水海の田楽能舞」、「能郷の能・狂言」、「上町法印神楽」等の継承者を対象とした現地調査に重点を置いた。具体的には継承者へのインタビュー、収集資料をもとに保存会、世襲制の状況、後継者の育成、伝承方法、舞台化、観光化等の継承の現状をデータとしてまとめ、分析を行った。その結果、市町村合併が民俗芸能の継承へ及ぼす影響、および後継者育成における学校教育の重要性が新たに浮上したため、これらは詳細を調査すべき事項として、次年度以降の調査課題に加える予定である。また、デジタルビデオによる動画とデジタルカメラによる静止画撮影により、各芸能を映像記録としてまとめ、次年度以降の分析の準備とした。 研究発表については、雑誌『文化経済学』において論文発表(「文化財政策における民俗芸能の継承にかかわる課題についての研究-「大江の幸若舞」「水海の田楽能舞」「能郷の能・狂言」を事例として-」)を行い、また次年度投稿予定の3論文(「民俗芸能の「保護」の戦前の系譜-『青年』と『民俗芸術』を中心に-(仮)」、「後継者の育成事業の事例研究-「上町法印神楽」と「松山能」を事例として-(仮)」、「市町村合併による町指定民俗芸能の継承への影響-「上町法印神楽」を事例として-(仮)」)についても資料収集、および執筆を行った。
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