本研究は、国の文化財保護政策下における民俗芸能の継承の実態を明らかにし、民俗芸能の保護に新たな提言を加えることを目的としている。したがって、複数の民俗芸能を継続的に調査することを前提としており、1年次(平成15年度)と2年次(平成16年度)を通して、継承状況を明らかにするための現地調査(継承者等関係者へのインタビュー、録音・録画、資料収集等による)を行った。また特に2年次においては、国の文化財政策関連の調査(文化財保護関連機関等へのインタビュー、資料収集等による)も行っている。 3年次にあたる本年度は、以上の民俗芸能の現地調査と文化財政策研究を併せて検証し、文化財政策の視点から民俗芸能の保護のあり方を検討する博士論文(『民俗芸能の保護をめぐる文化財政策の研究』)の執筆に重きを置き、3月に学位を取得した。また、論文執筆のための追加調査として、1年次より調査を行ってきた民俗芸能の中から、特に「大江の幸若舞」(福岡県山門郡瀬高町)、「能郷の能・狂言」(岐阜県本巣市根尾/旧本巣郡根尾村)、「水海の田楽能舞」(福井県今立郡池田町)、「松山能」(山形県飽海郡松山町)、「上町法印神楽」(宮城県登米市豊里町/旧登米郡豊里町)について重点的に調査を行い、保存会、世襲制の状況、後継者の育成、伝承方法、舞台化、観光化等の継承の現状をデータとしてまとめ、分析を行った。また国の文化財政策関連の調査に関しても、さらなる資料収集を随時行い、法制、組織体制、施策及び事業を柱として整理した。
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