本研究の目的は、(1)仏語圏西アフリカ諸国(セネガル共和国およびニジェール共和国)の国境部農村地帯における人類学的調査を通じて、日常生活を起点とする生産・流通過程を考察し、(2)(1)からえられたデータと国家・世界規模のマクロ経済的分析との総合から、「国家」vs「農民」といった単純な構図へは還元しえない、現代西アフリカ農村社会の重層的な現実の有り様を提示することにある。 本年度7月までは、セネガルの落花生産業を中心とした農村開発政策と公社史に関する文献研究をおこない、その成果を日本アフリカ学会(『国家に抗する農民』とは誰か-セネガル落花生経済からの再検討」-」5月31日)、および講師として参加したアジア経済研究所共同プロジェクト『アフリカ諸国の「民主化」再考』(「セネガルにおける落花生関連公社の再編(1960〜80年)」7月19日)にて口頭発表した。 その後、主に受け入れを依頼した研究機関との調整の難航と文献研究からえられた展望から、現地調査予定地をセネガルから同じ仏語圏西アフリカ諸国であるニジェールへと変更した。この調査地の変更は、類似した生態環境にありながら異なる国家に属する2つの社会の比較研究を可能とし、西アフリカの農村部における生産・流通過程のより総合的な理解をもたらすという点で、本研究遂行上、積極的な意義をもつ。 8月からはニジェールのソンガイ社会に関する文献研究をすすめる傍ら、同国の言語・口頭伝承史研究所(CELHTO)への受け入れ申請をはじめとする現地調査に向けた準備をすすめた。またアジア・アフリカ言語文化研究所の「間大西洋アフリカ系諸社会における20世紀<個体形成>の比較研究」に共同研究員として参加、研究交流を通じて調査項目の具体化をはかった。 来年度4月からはCELHTOの客員研究員としてニジェール西部国境地帯での現地調査を開始する。またセネガルについても文献研究は継続しておこない、その成果は学会誌にて発表する。 (以上799字)
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