研究概要 |
本申請課題の第一段階として、本年度は、さまざまな凝縮相のテラヘルツ時間領域分光法の観測を可能にするよう装置の改良を行い、定常状態におけるテラヘルツ領域スペクトルの測定を行った。具体的に行った改良と可能にした点は、 (1)装置全体を囲い乾燥空気を流すことにより、テラヘルツ領域の水蒸気による回転線の吸収線を除去 (2)クライオスタットを使用とテラヘルツ領域スペクトルの温度依存性(10K〜340K) (3)溶液セルの製作とそのテラヘルツ領域スペクトルの温度依存性 (4)液晶の相転移に伴うテラヘルツ領域スペクトルの変化 である。現在、本申請課題の体勢が整った状況である。今後、倍波発生によるフェムト秒可視光パルスを用いて、可視光ポンプ・テラヘルツ電磁波プローブの測定系の開発を行う。 本年度に行った研究により、テラヘルツ時間領域分光法による物質の同定および状態に対する診断の応用可能性を示した。ひとつは、封筒爆弾などのテロで使用されるC-4爆薬の検出である(Jpn.J.Appl.Phys.43 L414-L417,2004)。テラヘルツ領域に特徴的なバンドを観測し、特に、26.9cm^<-1>の強い応答のバンドを使用することにより、C-4爆薬の検査に応用可能であることを指摘した。もうひとつは、超高分子量ポリエチレン(人工関節などに利用)のγ線滅菌による劣化によって、テラヘルツ領域に吸収連続体が現れることを示した。これにより、超高分子量の劣化診断にテラヘルツ分光法が適用可能であることを示した。 生体分子に関する研究として、L-アラニンのテラヘルツ領域スペクトルの温度依存性(10K〜340K)の測定を行い、テラヘルツ領域のバンドが温度低下に伴いバンド幅の減少と高波数シフトすることを観測した。特に、75cm^<-1>のバンド幅は0.5cm^<-1>であり、比較的大きな分子の結晶モードのバンドとして、非常にシャープなものであった。現在、バンドシフトと線幅の温度依存性に起源について、研究を進めている。
|