研究概要 |
1979年の重い電子系超伝導体CeCu_2Si_2、その後の銅酸化物高温超伝導体の発見により、電子格子相互作用を媒介としたBCS超伝導以外の、強相関電子系を舞台とした異方的超伝導と磁性との関係に注目が集まっている。特にCe系反強磁性圧力誘起超伝導体において、異方的超伝導が反強磁性磁気臨界点(量子臨界点)近傍において観測されており、これらの超伝導が磁気臨界現象によって誘起されているということが示唆されている。 我々は、Ce系の中でも最近発見されたCeIn_3(P_c=2.5 GPa, T_c〜200mK)及びCeRhIn_5(P_c=1.6 GPa, T_c=2K)に注目し、それぞれの圧力誘起超伝導現象及びそれらの普遍的性質を探るために、低温高圧下のNQR実験を行った。結果を以下に纏める。 CeIn_3 1.圧力誘起超伝導がバルクなものであることを見出した。 2.圧力誘起反強磁性-常磁性転移は一次転移であり、量子臨界点が存在しないことを見出した。また臨界圧近傍で反強磁性と超伝導が微視的に共存していることを見出した。 3.一次転移圧力領域では反強磁性相と常磁性相の相揺らぎが示唆され、その揺らぎが反強磁性状態でのスピン密度の揺らぎをも誘起し、それぞれが超伝導に寄与していると考えられる。 CeRhIn_5 1.核磁気緩和率(T_1)の温度依存性より、1.2 GPa以上で銅酸化物高温超伝導体で見られる擬ギャップと同様な振る舞いを観測した。これはCeRhIn_5の超伝導発現機構が他の強相関電子系と普遍的性質を持つことを示唆する。 2.1.6 GPaにおいて、反強磁性と超伝導の単一相での微視的共存をT_1の温度依存性より確認した。 3.CeIn_3と異なり磁気臨界点の存在が示唆された。 両物質の磁性-超伝導臨界現象の違いを決定づけるようなT^k(重い電子状態のバンド幅)の圧力依存性の違いを見出した。
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