本申請研究では、金属酸化物等の無機結晶性化合物の諸特性に基づいて設計した高機能性固体触媒による環境調和型反応系の開発を目的としている。特に、固体表面を触媒活性種の配位子として捉え、活性金属種の電子状態、配位環境を精密に制御することを目指す。具体的には、ハイドロキシアパタイトのイオン交換能、吸着能に基づき、触媒活性種となる遷移金属を固定化し、分子・原子レベルで精密制御された不均一系触媒の開発を行った。また、これら合成した触媒を、各種有機合成反応に用いその機能を評価した。対象とした反応は、酸素分子、過酸化水素を酸化剤とする、オレフィン類のエポキシ化反応、C-H結合の酸素化反応などの高難度酸化反応、およびPd触媒を用いたHeck、Suzuki反応、希土類金属触媒によるクロスアルドール反応などの炭素-炭素結合形成反応であり、医薬品など高付加価値生成物の合成を検討した。さらに、種々の分光学的手法(UV-VIS、NMR、ESR、XRD、TEM、XPS、XANES/EXAFS)を駆使した反応活性点近傍の構造解析を通して、その優れた触媒機能と分子・原子レベルでの構造との相関を明らかにした。本研究で行った新規不均一系触媒の創製は、触媒設計分野のみならず、高機能性材料の創製を目指すナノテクノロジーの幅広い分野においても重要な知見を与えたといえる。 本申請研究の成果は学術雑誌へ既に投稿済であり、また、ユトレヒト大学(オランダ)、およびワシントンDC(アメリカ合衆国)で開催された国際学会でも発表を行った。
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