研究概要 |
今日の高度情報化社会において,その中心としての役割を担うものの一つに,SOI(Silicon On Insulator)ウエハがある.このSOIウエハは,通常のシリコンウエハの表面上にBOX(Buried Oxide)と呼ばれる絶縁層,更にその上に素子形成を行うシリコン層(SOI Layer)の2つの薄膜層を有するウエハである.これらの各薄膜層の厚さは,現在最も注目されるべきMPUなどの高機能半導体用の極薄膜型ウエハであれば,SOI, BOX層共に100〜200nmの範囲となっており,この数字は将来更に小さくなるものと言われている.当然,これらの薄膜層には高い完全性が要求され,各薄膜層内における欠陥検出が必要不可欠である。 SOIウエハの各層を非対称3層誘電体スラブ導波路と見立て,シリコンを透過可能な近赤外光をSOI層内に伝播させることで,ウエハ表面にエバネッセント光分布を発生させ,近接場光学顕微鏡の原理を応用し,SOIウエハ表面に発生させたエバネッセント光分布について,欠陥による場の変化を検出することで,SOIウエハ薄膜層内に存在する欠陥検出を目的とした欠陥検出装置を試作した.またこの装置において,新たに感度を向上すべく小型化したマイクロシリコンプリズムを用い,SOI表面上に発生させた赤外エバネッセント場をプローブ走査によりモニターし,その強度分布によってSOIウエハ表面上に存在する欠陥の検出を試みた.対象とした欠陥は,FIB加工機によって擬似的に作製,配置したSOI層を貫通するHF欠陥であり,結果として欠陥の大きさ,方向に対応した光の強度分布が得られ,本装置による欠陥の検出が可能であることを示した.
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