研究概要 |
言語情報に付帯するプロソディックな情報が,幼児の語彙獲得を促進しているか否かを検討する事を目的とした。なお,幼児が語彙を獲得する際に,既に保有している言語知識を利用している可能性が従来の研究より示されているので,非単語の連想価に着目し,連想価の高低によって,非単語に付帯するプロソディ情報の影響の受け方に違いがあるのかといった点について,非単語反復課題(幼児向け音韻的作動記憶課題)を用いて明らかにした。 実験1では,連想価の高い非単語について,音高情報を付帯させたものと音高情報を排除したものを作成した。そして,いずれのタイプの非単語(音高情報を付帯させた条件と音高情報を排除した条件)が,子どもにとって保持しやすいかを,非単語反復課題を用い測定した。また,実験2では,連想価の低い非単語について,実験1と同様の手続きを用いて実験を行った。対象児は,実験1,2ともに,年少児(3,4歳)15名,年長児(5,6歳)19名であった。 その結果,非単語の連想価が高い場合(実験1),非単語に音高情報を付帯させた条件での成績は,音高情報を排除した条件のそれに比べ,年少児ならびに年長児ともに非単語内の子音部分の成績が高かった。また,非単語の連想価が低い場合(実験2),非単語に音高情報を付帯させた条件での成績は,音高情報を排除した条件のそれに比べ,年少児ならびに年長児ともに非単語内の子音部分で高かったが,加えて,年少児の場合にのみ,非単語内の母音部分でも高かった。 これらの結果より,言語情報に付帯するプロソディックな情報は,幼児が新奇な単語を記銘する場合,その記銘を促進するが,特に,年少児がなじみの低い非単語を記銘する場合に,その効果はより大きくなることが明らかとされた。
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