火星気象は様々なタイムスケールの現象を見せる。そのため継続的な観測が必要不可欠である。しかし探査機に頼り切った現状では空間・時間の両方の連続性を確保するのには難がある。地上観測でのモニタリングには依然としてニーズがあると言える。 我々は、2003年観測期(2002年10月18日から2004年6月31日まで)に観測された諸現象について、西はりま天文台火星共同観測および月惑星研究会に大量に寄せられた優秀な画像アーカイブに基づいて、主として形態学的見地から、前期(2003年8月31日まで)3515個、後期4145個のデータを用いた現象事例報告を行った。これらの成果は既に論文としてまとめられている(前半期についてはPublications of Astronomical Society of Japan誌第56巻845頁、後半期については同誌に投稿中)。 また火星気象はダストなどエアロゾルの物理に支配される気象でもある。にもかかわらずエアロゾル(特にダスト)についての研究は、周回探査機による光学観測による研究が殆どであり、実験的検証が殆どなされていないのが現状である。火星地表面上の地質が明らかにされつつある現在、実験的なエアロゾル研究は急務である。そこで我々は近い将来我が国の着陸機が探査を行う際の基礎的研究のため、火星面上で見えるとされる『青い夕焼け』の再現実験からこの研究をスタートした。この実験を契機にダストの物性やサイズ分布などへの制約を与えることができるはずである。この実験については地球惑星関連学会合同大会などで発表されている。
|