Aeropyrum pernix K-1株に対して実験的に確立している遺伝子破壊系に対するバージョンアップを行なうことを目的としてエレクトロポレーション時に細胞破砕を最小限に抑えるバッファーの検討を行った。細胞に対して有害性の認められなかった多糖の中から細胞破砕抑制効果あるもののスクリーニングを行った結果、リビトール、およびマンニトールにおいて著しい効果を認めた。またそれぞれの多糖の最適濃度を検討したところ双方において1M前後の濃度で抑制効果は最大となった。また実際に遺伝子破壊系への適用を試みるために他のAeropyrum属分離株についても本法が適用できるかを検討したところ、深海熱水孔から分離されたAeropyrum caminiについては、Aeropyrum pernix K-1株に見られる相同組換えを利用した遺伝子破壊は確認することができなかった。 他のAeropyrum属分離株について本法が応用できなかったという結果は宿主の制限修飾系の違いが原因とみられた。そこでAeropyrum pernix K-1株をもとにした制限修飾系を逃れるためのメチル化酵素の選定を行ったところ、制限修飾酵素HaeIIIを用いて挿入する相同領域を修飾させると組変えの効率が大幅に増加することが確認された。今後は、他のAeropyrum属分離株についても本制限酵素が適用できるかを検討する予定である。 より汎用性の高いベクター系の構築を目指し、新規のAeropyrum株の分離を行った。九州および北海道の海浜温泉サンプルから本菌株の分離を試みたが、新規のAeropyrum株を分離することができなかった。16年度も引き続き日本各地の海浜温泉より本菌株の分離を試み、宿主ライブラリーを確立する予定である。
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