宿主ライブラリーの拡充 本年度も、前年に引き続き、より汎用性の高いベクター系の構築を目指し、新規のAeropyrum株の分離をおこなった。日本各地の海浜温泉サンプル、または陸上温泉サンプルから本菌の分離を試みた結果、鹿児島県山川町の砂浜から新規のAeropyrum株を分離することに成功した。これまでに分離したAeropyrum山川株は70株程度におよんだが、これらの株の詳細な性状、および遺伝的多様度を調べたところ、酸素耐性および乾燥耐性がタイプストレインであるA.pernixに比べ非常に高く、コロニー形成能を有することがわかった。遺伝子改変系においては、改変株を得た際のスクリーニングに平板培養を用いることから、今後の遺伝子改変系の構築にふさわしい株を得ることができた。また、タイプストレインとのDNA-DNA交雑試験を行った結果、70から78%の値を得たことから、山川株はA.pernixと同種であるものの、遺伝的に多様な変異を獲得している可能性が示唆された。来年度はこれらの株の中から、制限酵素産生に関する変異株をスクリーニングし、DM取り込み能を強化した株を得る予定である。 宿主の遺伝的多様を数値化するためのマーカーの探索 宿主ライブラリーの拡充には遺伝的多様の高い株を得ることが必須であることから、分離した株の多様性を瞬時に測るととができる分子マーカーの選択を行った。その結果、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子およびグリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の1次構造が比較的高い多様度を持っており、分離源の違いを反映していることがわかった。また、それぞれの遺伝子ライブラリーを用いて得られた系統樹はトポロジーがほぼ相似しており、多様度を推定する上で信頼性の高い情報を提供できるツールとなり得ることが立証できた。来年度は大規模なゲノム情報と、これら個々の遺伝子の1次構造を組み合わせた包括的なAeropyrum属遺伝的多様解析を進める計画である。
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