AAAタンパク質ファミリーの一つである、VCP/p97は様々な神経変性疾患に共通して観察される異常タンパク質の蓄積が原因とされる空胞形成、さらには細胞死に深く関与していることが明らかになってきた。また最近VCP/p97の機能制御にはリン酸化をはじめとする様々な翻訳後修飾が必要であることも明らかとなってきた。興味深いことに中でもVCP/p97はアセチル化を受け、その修飾がVCP/p97のATPase活性を調節していることが示唆される結果がえられた。またポリグルタミンとアセチル化されないアミノ酸置換変異VCP/p97を共発現させると細胞死が亢進されたことから、アセチル修飾がVCP/p97の機能制御に大きく関与していることが十分に示唆された。現在VCP/p97をアセチル化する酵素の同定するため、哺乳動物細胞からのタンパク質精製を検討している。まず実際に哺乳動物細胞内でアセチル化されるのか、またどのような状況時にアセチル化されるかについてしらべており、同時にタンパク質精製過程における活性画分の同定方法についても検討中。またアミノ酸変異置換体VCP/p97に対するアフィニティーカラムを作成し、結合してくる因子の違いについて調べた。正常型VCP/p97と比較検討した結果、アミノ酸変異置換体ではすでに報告されているcofactorとの結合性をはじめ、特に結合の異なる因子を確認することができなかった。しかしながら、正常型VCP/p97に幾つか特異的に結合している因子を確認することができたので、さらに今回アフィニティーカラムに結合してきたこれらの因子のプロテオーム解析についても現在進行中である。おそらくこれらの結果は、VCP/p97の活性を制御するような因子、またVCP/p97の基質といったような新しい因子が同定できれば、VCP/P97のこれまでにない新しい機能や制御機構について明らかにできるものと思われ、神経変性疾患におけるVCP/p97の役割を解明する手がかりを提供するものである。
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