触媒的不斉アリール化を契機とするマイケル型閉環反応の開発を目的とし、キラルホスフィン-ロジウム触媒系によるアリールボロン酸を用いた不斉アリール化反応を検討した。また、閉環用基質の適用範囲を調べることを目的として種々の単純な構造の基質を用いてロジウム触媒による不斉アリール化および銅触媒による不斉アルキル化を検討した。 不斉閉環反応の開発を目指して、当研究室で開発されたキラルアミドモノホスフィン-ロジウム触媒系によるアリールボロン酸の不斉共役付加反応を検討したが期待に反して反応はほとんど進行しなかった。そこで触媒系をBINAP-ロジウム錯体に変えたところ反応は進行したものの閉環体は得られず、アリール基のモノ付加体およびジ付加体が得られた。アリールボロン酸の当量を検討することで良好な収率で85% eeのモノ付加体を主生成物として得ることができた。現在はシークエンス型不斉閉環反応の完成を目指してこのモノ付加体からエノラートを発生させてジアステレオ選択的閉環化を検討中であり、触媒的不斉アリール化反応を用いた不斉閉環反応開発の端緒が良好に開かれつつある。 当初の予想と異なり閉環用基質への不斉反応の適用が容易でないため、単純な構造の基質を用いて種々のアクセプターおよび不斉配位子を検討し、閉環反応に利用可能な基質を調べることとした。イミン、アルデヒド、ニトロオレフィン等を用いてアミドモノホスフィン-ロジウム触媒系によるアリールボロン酸を用いた不斉反応を検討したが良好な結果は得られなかった。これと同時にアミドモノホスフィン-銅触媒によるジアルキル亜鉛の不斉付加反応を検討したところ、ピロリジン環上にかさだかい置換基を有するアミドモノホスフィンを用いるとトシルイミンの不斉アルキル化反応において最高97%収率、96%eeという優れた収率および不斉収率を与えることを見出した。
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