研究課題
今年度の研究では、細菌群集の変動が溶存態有機物を起点とした微生物食物網にどのような影響を与えるかを検証し、環境に対する細菌群集の応答と生態系における機能が系統分類群動態の把握によって明確に説明できることを示した。この成果を当該分野のトップジャーナルであるアメリカ陸水海洋学雑誌、Limnology and Oceanographyにおいて発表した。また、以下に示したメソコズム実験を行い、粒子状有機物の分解が単一の細菌系統分類群によって促進されることを世界で初めて明らかにした。この成果を2004年度秋季海洋学会において発表した。「植物プランクトンブルームの消長に伴う付着性および自由遊泳性細菌群集のダイナミクス」本実験は2004年5月に2週間、東京大学国際沿岸海洋研究センターにおいて行われた。従属栄養性細菌の基質および付着環境の供給源である植物プランクトンのブルームを意図的に起こすように栄養塩条件を調節したメソコズム実験を用い、従属栄養性細菌の群集組成および自由遊泳性-付着性の生息形態の時系列変化を2週間にわたり観察した。本実験の結果、粒子状有機物の増加によって、付着性細菌の全細菌生産に対する割合が自由遊泳性細菌のそれに比べて有意に高い値を示すようになった。また付着性細菌生物量の60%は連鎖状球菌の形態をとるサイトファーガ・フラボバクテリアによって構成されていた。この結果は粒子状有機物質の可溶化に単一の系統分類群が大きく寄与していることを意味する。この研究によりサイトファーガ・フラボバクテリアは粒子状有機物に付着し、分解するという機能を有していることが明らかになった。
すべて 2004
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Limnology and Oceanography 49,5
ページ: 1620-1629