研究概要 |
本研究では、まずCO_2レーザーを使った全光学的レーザー冷却法という新しい手法により、ルビジウム原子のボース凝縮体(BEC)の生成に成功した。通常行われているBEC生成法では磁気トラップ中で原子の蒸発冷却を行うが、全光学的手法では磁気トラップを用いずに、CO_2レーザーを使った光トラップ中で蒸発冷却を行う。このためこの手法には、蒸発冷却が短い時間で行える、BECにスピン自由度を持たすことができるという二つの大きな特徴がある。 また、蒸発冷却の実験を注意深く行うことにより、蒸発冷却時に光トラップ用の光であるCO_2レーザーの入射位置がずれてしまうことがわかった。これは蒸発冷却の効率を非常に悪くしていた。蒸発冷却時に光を弱める必要があるため、ビームを音響光学変調機(AOM)に通しているが、ここをビームが通るときにビームが揺らいでしまうのが原因であった。この揺らぎを抑えるために、ビームをAOMに2回通すことで揺らぎをキャンセルする手法を新たに考案し、この揺らぎを完全に抑えることに成功した。これによりBECを安定して生成することができるようになった。 CO_2レーザーを用いた光トラップは、原子のスピンに依存せずにトラップしているため、すべてのスピン成分をトラップできる。生成したBECのスピンの分布を観測するため、BECを光トラップから解放し、不均一磁場を加えてスピンに依存した力を加え、スピン成分ごとに分裂させる実験を行った。スピンはm_F=+1,0,-1の3成分を持ちうるが、そのうちのm_F=+1にほとんどの原子が集まっていることがわかった。 今後、ラゲールガウスビームを用いたラマン遷移を行いスピンを反転させて、ラゲールガウスビームの軌道角運動量をBECに与えることで量子渦を生成する。現在このための準備を進めている。 また、これらの研究成果を日本物理学会において発表した。
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