本年度は、主に「太陽フレアによって生じる衝撃波」と「リコネクション・インフロー」の研究を行った。 「太陽フレアによって生じる衝撃波」についての研究は、Hα線で観測される波動現象(Moreton wave)とX線で観測される波動現象(X-ray wave)の同時観測データを用い、X-ray waveがコロナを伝播する衝撃波であることを電磁流体力学の理論を用いて示した。さらに、X-ray waveのマッハ数は減少傾向にあり、ちょうど1になった時にMoreton waveが見えなくなるという結果を得た。これは、「Moreton waveはコロナを伝わる衝撃波が彩層を押し下げたものである。」という内田モデルの観測的な証拠にもなった。そして、これら2つの波を使うことによって、伝播の3次元的な様子も知ることが出来た。これらの結果は論文(レター)にまとめ、"X-Ray Expanding Features Associated with a Moreton Wave"というタイトルでPublications of the Astronomical Society of Japanから出版される。(56巻2号に掲載予定) 「リコネクション・インフロー」についての研究は、インフローの観測データを13例発見し解析を行った。現在、太陽フレアを説明するモデルとして、磁気リコネクション説が広く支持されているが、その証拠の1つであるインフローの観測は、これまで1例しか報告されていなかった。そこで、これまでの観測データを調べなおすことによって、新たに13例のインフローを発見した。この発見によって、インフローの存在に一般性が出てきた。そして、インフローの速度(10km/s以下)とリコネクションの特徴を示すリコネクションレート(0.002〜0.011)を統計的に求めることが出来た。この結果については、現在論文を執筆中である。
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