・透過型CCDの開発 次世代X線天文衛星NeXT(2010年度打上予定)搭載用透過型CCDの開発を行なった。我々は軟X線に感度が高く位置・エネルギー分解能に優れるX線CCDを上段に、硬X線検出器を下段におくことで広帯域撮像・分光能力を備えたNeXT用焦点面検出器(WXI)を開発している。上段のCCDは自身で検出できないX線をロスなく透過させるため、不感領域を極力薄くした「透過型」にする必要がある。そこで世界最高クラスの性能を持つ浜松ホトニクス社製CCDを強度の限界である190umまで削り込んだ透過型CCDを試作し、検出効率、エネルギー分解能等の劣化なく加工できることを明らかにした。但し空乏層は80um程度であるため、不感領域がかなり残ることになる。完全空乏化のため、CCD素材を見直し、N型半導体を用いたN型CCDの試作を行った。評価の結果、世界最高クラスである空乏層320um相当の検出効率を達成し完全空乏化可能であることを実証した。上記の結果は私が主著者として日本天文学会等で発表を行ない、2004年6月に英国で行なわれる国際学会(SPIE)での口頭発表が決まっている。 ・銀河中心高エネルギー活動の研究 銀河中心の大質量星団Quintupletから硬X線放射および中性鉄輝線放射の兆候を発見した。前者はQuintupletで現在も活発な星形成があることを示唆し、後者は分子雲に付随していることからQuintupletか銀河中心ブラックホールの過去の活発な活動性を反映するX線反射星雲の可能性がある。両者とも銀河中心高エネルギー現象の解明において重要な意味を持つが、現在の観測の質では起源の検定は出来ないため、私が研究責任者として米国のX線天文衛星Chandraに観測提案を行なった。また、アーカイブデータ解析により銀河中心近傍から超新星残骸候補を発見し日本天文学会で報告(共著者)した。
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