研究概要 |
流域規模の土砂動態予測を目的とし,インドネシア・レスティ川流域を対象に,観測とモデル開発を行っている.森林伐採などの人間活動が土砂生産に与える影響を評価し,持続的発展のための流域土砂管理手法を提言したい.初年度は,土砂生産・輸送メカニズムの解明と,土地被覆の時系列変化の把握に重点を置き,土壌侵食・浮遊砂量観測,リモートセンシングを用いた植生変化の抽出を行った.さらに,土砂流出モデルの不確実性評価を行った. 平成15年10月と12月の二度にわたりレスティ川流域を訪問し,現地観測と観測機器の設置を行った.10月には3台の雨量計と12本の土壌侵食測定用標尺を設置して観測を開始した.土地利用と勾配の異なる斜面で土壌侵食を計測し,土壌侵食量と降雨強度を関連付けることが目的である.これは現地の人に依頼して継続観測を行っている.また,12月には河道内の土砂濃度と土砂のサンプリング調査を河道の縦断方向わたって実施した.これにより,最上流の森林からは土砂の流出が少なく,土砂採取などの人工攪乱が,通常時には土砂流出の大きな要因であることが明らかになった. 観測時期の異なる40シーンのTERRA/MODIS画像と,LANDSAT/ETM+による土地利用分類画像を比較することにより,土地利用ごとの植生活性度の時系列変化を調べた.その結果,流域内の大部分を占める耕作地や果樹園では,雨季のはじまる10月に植生の活性度が極めて低くなり,ほぼ裸地のような状態になることがわかった.また,それらの植生は12月までには回復することも明らかになった.このことは,雨季のはじめの大雨が大規模な土壌侵食をもたらす可能性を示唆している.土壌侵食量と植生活性度を関連付けることが課題である. 観測と並行して,分布型土砂流出モデルの開発をすすめている.特に,観測の不十分な流域における土砂流出モデルの不確実評価に関する研究で成果を得ている.
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