研究概要 |
(1)ケイ素およびホウ素置換アルキル銅反応剤の調製とその有機合成的利用 ケイ素とホウ素の置換したクロロリチウムカルベノイドに対してグリニャール反応剤とシアン化銅を作用させることでクプラートを経由した1,2-転位反応が起こり、炭素置換基が新たに導入された有機銅種を調製できることを見い出した。この銅種はヨウ化メチルや臭化アリルなどの求電子剤による捕捉が可能であり、この反応では四級炭素化合物が生成物として得られる。また、このケイ素とホウ素が同一炭素上に置換した銅種は空気酸化することによりペルオキシド中間体が一時生成し、続けて選択的にホウ素置換基のみが脱離して対応するアシルシランへと変換できることを明らかにした。このことにより以前に開発したケイ素置換アルキル銅種の空気酸化の系をホウ素置換基による系へと大幅に拡張できた。 (2)アート型銅中心での1,2-転位を利用したリチウムカルベノイドからの有機銅反応剤の調製 2つの有機ケイ素基で安定化されたカルベノイドを鍵中間体として、種々の有機マグネシウム反応剤と1価銅塩をそれに反応させることで多様なシリル2置換アルキル銅種を調製できることを見い出した。特に1,2-転位で導入する炭素置換基を検討するなかで、通常銅反応剤のダミーリガンドとして用いられるシアノ基と2-チエニル基についてはその対カチオンとなる金属イオンをリチウムもしくはマグネシウムで使い分けることにより選択性のスィッチングに成功した。その他には、分子内に電子求引性基を有したり、自身が大きなπ-共役系で構成された芳香族アニオンはその安定性から転位能が低いと予想されたが、対カチオンをマグネシウムとして作用させれば、対応する銅反応剤が中程度以上の転化率で調製できることを明らかにした。
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