研究概要 |
リチウムホスフィドを用いた銅カルベノイドのホスフィン化反応ならびに新しく開発した反応により得られた3価のジシリル置換メチルボスフィンを遷移金属触媒反応の配位子として利用可能であることを明らかにした。シアノ基、アルキニル基、2-チエニル基、シリルメチル基などのアニオン性化学種は、通常一価銅のダミー配位子として有機銅試薬の熱的安定性および反応性を改善する目的で用いられ、それ自身は反応に直接関与しない。ここで検討したリンアニオンであるホスフィノ基もそれらと同様の目的でこれまで用いられてきた。しかし本反応のように、銅カルベノイドに対しリンアニオンを作用させると、アート型銅中心での1,2-転位反応を経由してホスフィノ基が基質へ導入された銅種を調製できることを見出した。 また、リチウムジシリルクロロカルベノイドに化学量論量のシアン化銅とリチウムジフェニルホスフィドを作用させることで調製できる銅種を酸でクエンチすると、α位にシリル基が二つ置換したメチルジフェニルホスフィンが得られた。この三価のホスフィンは空気中で安定であり、またX線結晶構造解析、DFT計算およびセレンを用いた評価により、立体的に嵩高く電子豊富なリン配位子として遷移金属触媒反応へ利用できる可能性が示唆された。種々検討の結果、2種類の触媒反応(Heck反応においては反応温度の低下、辻-トロスト反応においては直接アリルアルコールをアリル源とすることができた)に適用できることを明らかにした。
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