当初計画していたように、リボソーム翻訳中においてアミノ酸-DNA複合体をタンパク質内に導入・ラベル化することは、リボソームトンネル等の問題があり、困難であった。そこで現在は、リボソームトンネルの大きさを調査するとともに、非天然アミノ酸の導入技術を駆使して、反応基を持つアミノ酸を導入したタンパク質を合成し、その後mRNAやDNAでラベル化することを試みている。 一方、別の角度からのアプローチとして、試験管内人工進化法の技術を用いて、タンパク質の特定部位を認識するDNAを効率よく取得する方法を開発した(論文投稿中及び特許出願準備中)。この新技術は、従来の技術と比べて非常に効率が良く、短期間で目的のアプタマーを得ることを可能にしたものである。 さらに、この技術を発展させることにより、タンパク質の特定部位に糖を付加させるリボザイムを得ることに成功した。このリボザイムは、生体内糖付加反応を模倣しながらも、未知の糖-タンパク質結合反応を触媒しており、既存のプロテインコードを拡張することにもつながる。現在は、このリボザイムについてその機能を調査中であり、今後、これらの手法を用いてタンパク質をラベル化することを検討中である。 また、理論研究においては、私が構築した分子間相互作用解析プログラムを用いて、大きな分子系の分子間相互作用について、その詳細を明らかにした(J.Phys.Chem.B 2003)。現在、このプログラムは生体分子系に応用するために再構築中であり、完成後はタンパク質間相互作用の解析を試みたい。
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