研究計画に従い、本年度は亜鉛フィンガードメインのカルボキシル末端(C末端)部位に焦点を絞って研究を進めてきた。亜鉛フィンガーのC末端部位は、亜鉛配位子である2つのヒスチジン(His)残基間のアミノ酸数に応じて多様な構造を形成する。さらにこの領域は塩基認識に関与するヘリックス領域に直接的に繋がっていることから、亜鉛フィンガーの機能に大きく寄与することが示唆される。今後C末端側にヒンジヘリックスを連結することを考慮し、まずこの領域の構造変化に伴う亜鉛フィンガーの塩基認識への影響を検討することにした。 天然の亜鉛フィンガーにおいては、このHis残基間のアミノ酸数が3つ(HX3H型)または4つ(HX4H型)のものが主に存在し、前者は3_<10>-helix構造、後者はhelix構造をとることが構造解析により明らかにされている。本研究においては、過去の研究結果により特異的に結合する配列が明らかにされているSp1亜鉛フィンガー(HX3H型)とGLI亜鉛フィンガー(HX4H型)を選択した。この両者間でHis残基間の配列を変換した変異体を調製し、種々の分子生物学的手法により解析した結果、このHis残基間のアミノ酸数の変化に伴い、基質DNAへの結合親和性が低下することが示された。さらにその影響の度合いが後に続くリンカー配列の性質に依存することが示唆された。以上の結果は、His残基間の領域が亜鉛フィンガーのデザインにおける新たなターゲットとなりうることを示すだけでなく、今後C末端部位にヒンジヘリックスをはじめとした様々な機能ドメインを連結していく上で、有用な知見を提供するものと考えられる。
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