研究概要 |
今世紀は,「重力波天文学」が宇宙を知る上で重要であることは間違いない.日本国内では,TAMA300と呼ばれるレーザー干渉型重力波検出器が稼動しており,次期計画としてLCGT計画がある.本研究では,重力波観測の主要な標的の一つである,コンパクト連星系から放出される重力波波形の理論的予測,重力波のデータ解析法の構築を行う.そのためには,コンパクト連星系の運動を正確に知る必要があり,コンパクト連星系の運動を正確に記述することを第一の目標とする.次に,重力波データ解析で用いることが可能な精密な理論重力波波形を導出し,最終的に重力波検出器によって得られるデータを用いた重力波データ解析法を構築する. 平成16年度は,球対称(シュバルツシルト)ブラックホール時空中のコンパクト天体に対する重力的反作用力の定式化の研究をさらに発展させ,より正確な重力波波形を得るために系統的に高次摂動を計算する方法を提案した.この処方は,スカラー場(重力波はテンソル場)を下に開発されたが,重力場にも適用可能である.さらに,宇宙にある一般的なブラックホールは,軸対称(カー)ブラックホールであるが,この時空中でのコンパクト天体の運動の定式化も進行中である. また,コンパクト連星系が合体しブラックホールを形成する最終段階に生じるリングダウンと呼ばれる重力波に対し,昨年度構築したデータ解析法を用い,TAMA300のデータを用いたリングダウン重力波データ解析の処方をまとめた.このリングダウン重力波を検出することは,ブラックホールを直接観測するという意味で非常に興味深い.
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