二核銅-酸素錯体とフェノールとの反応 ピリジルエチルアミン系三座配位子を用いて調製した(μ-η^2:η^2-peroxo)二核銅(II)錯体、および同様の二座配位子を用いて調製したbis(μ-oxo)二核銅(III)錯体と各種フェノール誘導体との反応を速度論的に検討した。いずれの二核銅酸素錯体も各種パラ置換フェノール誘導体と反応し、対応するフェノールの二量体を良好な収率で与えることがわかった。また、この反応速度は基質の酸化還元電位に大きく依存していることから本反応はいずれの場合にもプロトン移動とカップルした電子移動機構で進行していることがわかった。また、bis(μ-oxo)錯体の反応性はペルオキソ錯体に比べかなり高いことも判明した。 銅(I)錯体内に存在するd-π相互作用に及ぼすパラ置換基効果 配位子側鎖の芳香族環のパラ位に各種置換基を有するピリジルエチルアミン系三座配位子を用いて調製した銅(I)錯体内に存在するd-π相互作用の構造や物性および反応性に及ぼす配位子の置換基の電子的効果について検討した。いずれの場合においても銅(I)イオンと配位子側鎖のベンゼン環との間にη^2型のd-π相互作用の存在が確認された。各種分光学的手法からd-π相互作用の相対強度を決定したところ、H体の場合が最もd-π相互作用が強く、電子供与基や吸引基を導入することによりd-π相互作用が弱くなることを明らかにした。 銅(I)錯体の分子状酸素との反応に及ぼす配位子効果 ピリジルメチルおよびエチルアミン系三座配位子を用いて調製した銅(I)錯体の構造や物性及び分子状酸素との反応性について比較検討を行った。その結果、配位子側鎖をエチレンからメチレンに変えることにより、中心金属のルイス酸性が向上し、銅(I)錯体の分子状酸素に対する反応性を増大させるとともに高原子価bis(μ-oxo)錯体が生成することを見いだした。
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