二核銅-ジスルフィド錯体とリチウムフェノラートとの反応 分子内にジスルフィド結合を導入したピリジルアルキルアミン系二核化配位子を用いて調製したジスルフィド二核銅(I)錯体およびビス-μ-チオラト二核銅(II)錯体とフェノールのリチウム塩との反応について詳細に検討を加えた。その結果、いずれの場合も反応が効率良く進行し、配位子の硫黄原子とフェノールのα位に炭素-硫黄結合が生起した生成物が定量的に得られた。この得られたチオエーテル基を有するフェノールの構造はガラクトースオキシダーゼ活性中心に存在する有機補欠分子の構造と同じであることが判明した。したがって、この炭素-硫黄結合の生起反応はガラクトースオキシダーゼ活性中心の有機補欠分子の生合成過程のモデル反応として大変興味深いものと考えられる。 銅(I)錯体によるC-Cカップリング反応機構に関する速度論的考察 一連のピリジルアルキルアミン系配位子を用いて調製した銅(I)錯体と各種ベンジルハライド誘導体との反応について詳細に検討を加え、ベンジルハライドのカップリング反応に及ぼす配位子の効果とその反応メカニズムを明らかにした。その結果、銅中心へのドナー性の高い配位子のみに反応の進行が見られた。さらに本反応は銅(III)有機金属種が反応中間体として存在し、対応するカップリング生成物が得られるとともに銅(II)ハロゲン化物が得られるというメカニズムで進行していることを明らかにした。以上の結果はこれまで不明であったAtom Transfer Polymerizationの反応メカニズムについて重要な知見を与えるものとして期待される。
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